ええかげん ええかげん

ベース弾きのヒトリゴト的ブログ

Notice

春のライブツアー 第3弾 初の名古屋公演
ホームページにて動画公開中!!


ホームページ MoviesをCheck it out!!
ホームページはこちら

取り壊し  

 隣の空き家が取り壊された。
 
 木造平屋の落ち着いた家だった。
 見事だった生け垣も、庭に植えられていた背の高い木々も、すっかり何もなくなった。

 今の家に越してくる前も、私は同じ町内に住んでいた。子どもたちが大きくなって前の家では手狭だなぁと思っていたところ、近くにあったスーパーが取り壊されて、そこが分譲されたので買い換えた。
 我が家はその分譲地の一番端っこで、その隣はずっと以前から住んでる、もうリタイアされた老夫婦の家だった。
 引っ越しを決めたとき、周囲の口さがない人たちからは隣のご主人には気をつけるようにと言われた。気むずかしいことで評判だと。
 しかし私たちは一度もイヤな思いなどしたことがなかった。それどころか、気持ちよく隣人として過ごさせていただいた。
 飼っている猫が家を飛び出し、隣家の庭に迷い込んで走り回ることが何度かあった。猫を捕まえるために呼び鈴を押して事情を話すと、イヤな顔などされず私たちを庭に招き入れ、私たち家族と猫の追いかけっこを楽しそうに見ておられた。
 ご主人も、奥様も、よく門掃き(かどはき…家の前の道を掃き清め、打ち水をする京都の習慣)をされる方たちだった。そして、その時は必ず我が家の前までも掃いてくださった。庭の植木の落ち葉が私たちに迷惑を掛けているからと言って。その庭木も枝が我が家の敷地に入らないように気を遣って、我が家の方向に伸びている枝を、こまめに庭師に切らせておられた。
 私たちは迷惑に思うどころか、秋の金木犀の香りを初めとして、四季折々の木々の移り変わりをむしろ楽しませていただいていた。猫たちも庭木にやってくる鳥たちを見るのが大好きだった。だから掃いてくださらなくていいですと何度も言ったのだが、笑って「分かりました」とおっしゃるだけで、気がつけば我が家の前の道はいつも掃き清められていた。
 そのご主人が亡くなり、しばらく奥様が独りで住んでおられたが、お子様と同居することになり引っ越していかれ、隣家は空き家となった。
 しかし引っ越してからも、奥様は家に風を通すために時折訪れられては、やはり門掃きをして帰られる。そしてその度に我が家の前も掃いてくださった。
 そんなに深いおつきあいはなかったが、顔を合わせると気持ちよく目礼を交わすことの出来るご近所さんだった。

 その家に買い手がつき、取り壊されてしまった。

 きっと広い庭のどこかに巣を作っていたに違いないカラスが、悲しげに啼いていたと、妻は寂しそうにつぶやいた。






にほんブログ村 音楽ブログ バンド活動へ





 
 



 
関連記事

Posted on 2012/07/07 Sat. 18:07 [edit]

category: エッセイ

thread: 雑記 - janre: 小説・文学

コメント

>PATTIさん

素晴らしいと言えるような
生き方は残念ながらまだまだこれから
です。

精進いたします(^^)

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/07/11 02:15 | edit

>まゆみさん

> イマドキ、近所付き合いってなかなかやけど
> 私は大事にしていきたいなぁ(^_^)/~~と思います
同感です。
難しい人はいっぱいいますけど
大切にしていきたいですね。
そういうことが大切だと思える気持ちも
大切にしたいですね。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/07/11 02:14 | edit

>マナサビイさん

初めまして。
コメントありがとうございます。

今回頂いたコメントで
マナサビイさんが
昭和なもの
ちょっとレトロなものを
愛されてる理由が
ちょっとだけ見えたような気がしました。

あ、私も時々お邪魔してます(^^)

これからもよろしくお願いします

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/07/11 02:12 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 |  #
2012/07/09 20:26 | edit

きしもとさん、こんにちわ。

きしもとさんご夫婦の生き方が
素晴らしいと思います。

URL | PATTI #-
2012/07/08 12:44 | edit

隣人が、老夫婦で良かったと思ったように
あちらも隣人が、きしもと一家で良かったと
思ってはると思いますよ(^^)v

私の家は地主さんが娘の家を建てるため、ご近所メンバーを選抜して売らはったところで…
後から中古買って入ってきた私達夫婦を皆さま心配してたみたいです(笑)

イマドキ、近所付き合いってなかなかやけど
私は大事にしていきたいなぁ(^_^)/~~と思います

URL | まゆみ #-
2012/07/08 09:24 | edit

はじめまして。あし@から時々拝見させていただいていたんですが・・・
共感という表現はおかしいかもしれませんが、じーんと来てしまいました。
ワタシも子供の頃に住んでた木造の家が取り壊された時に感じたんですが、家そのものも命のある生きているものだなあと感じたんです。うまくいえないんですけど。だから取り壊された時は、ほんとに悲しかったし淋しかったです。
お隣さんの優しい佇まいのおうち、ご夫婦の暮らし、ずっと続いてて欲しかったですね。
お隣さんとの思い出、これからも大事になさってください^^

URL | マナサビイ #-
2012/07/08 05:26 | edit

>toriさん

きっとそうなんですね。

私たちの生きた跡も
泡沫(うたかた)のごとく
一瞬で消えていくのでしょうね。
だからこそ美しいと言える
あの老夫婦のような
生き方がしたいものだと思います。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/07/07 22:57 | edit

いつまでも存在していて欲しいと願うのは
本当に難しいことなのかもしれないですね。
人も場所も。

亡くなられたご主人も奥様も
お隣のきしもとさんご家族が
そんな風に感じてくれて
きっとこれからも覚えててくれることに
喜んでくださってるんじゃないかな~

URL | tori #-
2012/07/07 21:59 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://eekagen.blog134.fc2.com/tb.php/349-8f254f6a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

What's New?

Comments+Trackback

文字を大きく・小さく

VIDEO

Homepage

楽天

AdSense

FACEBOOK

ブログランキング

Discography

Mail

Counter

検索フォーム

アンケート

Categories

Archives

Good Links

Profile