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「酩酊船」合評会  

 土曜日、仕事は午前で終わり、昼から兵庫県たつの市に向かった。同人誌「酩酊船」の合評会に向かうためだ。
 ――──「酩酊船」についてはすでに何度か書いているので、続けて読んで下さっている方はお分かりだと思うが、父が若い頃、仲間たちと創刊した文学同人誌だ――──
 合評会そのものは、午後1時半から始まるので、京都から車で向かった私はとうてい間に合わない。合評会に参加して論議に加わると言うよりも、病み上がりの父の付き添いがてらの参加なのでちょうどいい。
 仮に会議の冒頭から参加できたとして、意見を求められたりしても、ベテランの老作家たちの視線の中で、しどろもどろになることは必至だ。
 また、親父の病からの生還をたたえて、親父のことを書いた私の作品(と言うのもおこがましい、素人の作文レベルの駄文)に対しては、おそらく批判的な言葉はまず出てこないだろう。褒めていただくのは嬉しいが、そのような席でまな板の上に乗せられて、いろんな角度から分析された上で褒めていただいたりしたら、きっと恥ずかしくて顔から火が出るどころか、顔が火ぶくれして破裂してしまいそうになるに違いない。今日の午前中に仕事が入ったことは実に好都合だった。(笑)

 山陽自動車道のたつの市のICを降りたのは会議の終わる30分ほど前だった。なかなかいい時間だ。
 京都の家を出るとき親父に電話したら、少しでも早く来るようにと言っていたので、病み上がりの父のことを考え、時間調整したり、わざとゆっくり行ったりはしていない。むしろ車は飛ばし気味で行った。
 インターを降りてしばらく走り龍野大橋にさしかかると、突然懐かしい風景が広がった。
 ここは親父の実家がある街で、幼い頃、盆暮れには必ず訪れた。川沿いにバス停があり、そのバス停から実家までタクシーで走った。今、自分が走っている道がその道だった。川に沿った道には紫色の大きなぼんぼりがズラッと並んでいたのを覚えている。さすがにそのぼんぼりはもう無かったが、それを立てていたと思われる土台の金具は残ってた。

 会議は、小高い山の中腹に建てられている国民宿舎の一室を借りて行われている。国民宿舎の職員に案内されてその部屋の扉を開け、席に着いた。10名ほどの参加者がいた。
 会議は終盤にさしかかっていたので、幸い、大仰な歓迎の言葉などなく、ひっそりと着席することが出来た。親父も元気そうで普通に発言していてホッとした。
 参加者の顔ぶれを見ると、司会の前之園氏を除き、見知らぬ人たちばかりだった。前之園氏自身も幼いことに数度お会いしたことがあるだけで、こんな人だったのだなあと思うぐらいだった。ブログに少しお邪魔したことのある方が一人おられるはずだが、面識はなく、どの方がそうなのか、今日、参加しておられるのかもよく分からない。
 しばらく会場を見渡していると、見覚えのある人がいた。
「ん?誰だっけ・・・・・?」
あまりに意外な人物だったのですぐにはピンと来なかった。しばらく考えて気づいた。見覚えがあるのは、テレビの画面で見ていたからだった。弁護士で国会議員の丸山和也氏だった。
「まさか。丸山さんと知人だなんて聞いてない。きっとよく似ている人だろう。」maruyama2.jpg
と思ったが、発言する声、喋り方を聞いて間違いないことを確信した。
「丸山さんって文筆活動もしてたっけ?」
と思ったが、発言を聞いていると出版はしてはいない習作がいくつかあるらしい。その習作の話になり、突然、中島敦の「山月記」について語り出されたときは、随分驚いた。
 丸山氏は「山月記」は未完であるような気がしていて、中島敦の文体をまねて、その続編を書いたのだと言っていた。
 
 山月記は
隴西ろうせい李徴りちょうは博学才穎さいえい、天宝の末年、若くして名を虎榜こぼうに連ね、ついで江南尉こうなんいに補せられたが、性、狷介けんかいみずかたのむところすこぶる厚く、賤吏せんりに甘んずるをいさぎよしとしなかった。」
で始まる、漢文調の格調高い作品だ。私の高校時代の現国の教科書に載っていて、冒頭部分は暗唱させられた。
 その「山月記」は今の高校生の教科書にも載っていて、高2の娘が
「現国のテスト範囲が「山月記」で、難しくてよく分からない」
と嘆いていたので、娘の学習プリントの採点をするために、ちょうど前日、30年ぶりに読んだばかりだった。今も教科書に載っているということに驚き、暗唱させられた名文が次々に思い出されることに興奮した。
 「何という偶然か!ここを逃してはきっと発言する場面はない」
と思い、ちょっと丸山氏に質問をしてみた。質問するにあたり暗唱した文を少しそらんじてもみせた。ちょっと得意でもあり子供じみた満足感も得られた。娘に感謝!!(^◇^)

 その後すぐに合評会はお開きとなり、座敷に場所を移して懇親会が始まった。ブログを通してお話ししたことのある方も分かった。少しお話も出来た。尾道を題材にした小説を主体に書いておられ、尾道大学の客員講師として、東京から講義をしに行かれているそうで、お話は実に楽しかった。
 また酩酊船が復刊してもう27年になることも分かった。
 若い頃始めた同人誌を、また復刊するのだと親父が嬉しそうに語っていたのは、10年ほど前だったかと思っていたが、そんなにも月日が経っていた。27年前というと、親父はちょうど今の私の年齢ぐらいだ。私はまだ学生だったか。
 前之園氏は私の作品について随分高く評価をしてくださった。思い出の一コマをうまく切り取り、さりげなく読者に提供できていると評してくださった。そして、必ず次回作を書きなさいとおっしゃった。
 その夜は宿舎の一室で親父と泊まった。他の方は前之園氏の部屋で深夜まで語り合っておられたが、親父はまだ体調が完全ではなく、早々に布団を延べて横になっていた。
 親父と二人きりで語り合うなんて、殆ど無かったことで、懐かしい昔話に花が咲いた。
 12時ぐらいに部屋の灯りは消した。眠ろうと思ったが、自分が小説を書くとしたらどんな題材にしようかという思いが頭を駆けめぐり、なかなか寝付けなかった。

 翌朝、朝食を食べてすぐに宿舎を立ち、親父を実家まで送った。
 帰りの車中でも、親父といろいろと話をした。親父と話すことの照れくささはもうどこかへ消えてしまっていた。

 こんなに長く親父と話したのは、思春期以後、初めてのことかも知れないと思った。 






 



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Posted on 2012/05/28 Mon. 14:26 [edit]

category: エッセイ

thread: 雑記 - janre: 小説・文学

コメント

> Satoさん

初めまして。
ご来訪、コメント、ありがとうございます。

ホームページ拝見しました。
素敵な水彩画を描かれるんですね!
それに、なんと見事なお庭でしょうか!
今度実家に帰った時
ご迷惑でなければ
是非一度お邪魔させて頂きたいと思いました。

今後ともよろしくお願いします。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/06/03 23:19 | edit

はじめまして。

お姉さんの紹介でブログに時々お邪魔してます。
ずいぶん前になりますが、お通夜でお会いしましたね。
酩酊船のお話は、お父様からもうかがってます。
とっても嬉しそうにお話になりました。

酩酊船デビューおめでとうございます。
次の作品も待っていますね。

突然失礼しました。

URL | sato #3/VKSDZ2
2012/06/03 12:21 | edit

こないだ
久しぶりにブログ見てから
すぐにわざわざ通りましたよ~(^^)v
あーこれは怖いと思ったわ('ε'*)

ほら、うちの会社も近いしね~(^^)v

私も会社では隠れて吸ってるので(笑)
墓場は恐いけど…
一緒にプカプカさせますか(o^-^o)

URL | まゆみ #-
2012/06/02 22:30 | edit

>toriさん

> 初めて会った気のしない人たちばかり
> そんな感覚に陥ったりするのでしょうか。

まさにそうでした。
もう70歳を越えた方ばかりなんですが。
私も普通に温かく迎え入れてくださいました。

次回作、本気で書いてみようかな
なんて思ってます。
今度はブログ記事やなくて、小説を…
なんちゃって(^o^)

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/06/02 22:03 | edit

>まゆみさん

あのお墓ご存じですか。
今度墓場デートします?(^o^)

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/06/02 22:00 | edit

「酩酊船」の合評会

弁護士(国会議員)丸山さんといい
実りの多い会だったのですね。

「酩酊船」でつながり
たくさんの方たちが参加されて
初めて会った気のしない人たちばかり
そんな感覚に陥ったりするのでしょうか。
経験なですけど。

URL | tori #-
2012/06/02 10:53 | edit

ドキドキが伝わってくるぅ~(>_<)
でも すごく濃密ないい時間ですね。。。

大人になって、最近は
親と対等に話が出来たり
介護と孫育てしている親のグチ聞いたり
頼られたりする事も増えてきて…
なんだか嬉しいような寂しいような(^_^;)

でもやっぱり親には勝てないとゆーか
あたまが上がりませんね…☆


お墓…ありますね。
夜はあそこでタバコはきついっす!!ヒャー(;o;)

URL | まゆみ #-
2012/06/02 09:37 | edit

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