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親父の背中  

 病室の扉を開けると、親父は眠っていた。
 正月に会ったときに比べて随分痩せていて驚いた。
 介護ベッドの上半身部分を起こし、座った格好で上を向いて口を開けて眠っている親父は酷く老け込んで見え、うろたえた私は
「タバコ、吸ってくるわ。」
と母に言い残し外に出た。
 病院に着くまで晴れ渡っていた空は雲に覆われ、粉雪が強い風に舞っていた。
 身を縮めながら病院の敷地の外に出た私は煙草に火を点け、深く煙を吸い込み気持ちを落ち着けようとした。

 病室に戻ると、程なくして親父は目を開けた。
「どうや?痛むか?」
「じっとしてたらどうもないけどな。動くとな。」
「腹筋が引き攣るんか。」
「うん・・・。口が渇いてかなわんわ。」
「口開けて寝てたら、そら喉も渇くわ・・・。えらい痩せたな。」
「そうやろ。我ながら男前になった。」
そう言って親父は笑った。
 痛み止めの副作用もあるのか、親父はすぐにウトウトと微睡んでしまう。私はいい年して親父と喋るのは照れくさい。会話は弾んだとは言い難い。
 「肩越しの月」の話をしようと思っていたのだが、なかなか切り出せない。仕方なく、携帯の画面にブログを表示して読んでもらうことにした。
「俺、ネット上にエッセイ的なもん書いててな。」
「エッセイ?」
 ブログと言わずエッセイという言葉を使ったのは、作家である親父にはその方が伝わりやすいと思ったのだ。
 作家と言っても自費出版本と主宰を勤める4本ほどの同人誌の発行が主で、時折新聞の連載を書いてたぐらいなのだが、私が就職を決めたときに、親父はそれまで勤めていた仕事をすっぱり辞め、文筆業に専心してきた。新聞社のカルチャースクールなどで、後進の育成にも当たっている。
 そんな親父だから、私が文章を書いているというと表情が変わる。数年前に私の文章がいくつかの書籍に収録されたときには、ことのほか喜んでくれた。
 おぼつかない指先で携帯の小さいボタンを操作しながら、ゆっくり時間をかけて読んでくれた。そして、とろんとしていた目の色が次第に光を帯びたものに変わっていった。
 途中、検温に来た看護師に問診されても生返事で画面から目を離さない。
 読み終わった親父に
「先生、何点いただけますか?」
と、照れ隠しに私は笑いながら訊いたが、親父は目を閉じ1つ1つの言葉を選びながら、先ほどまでの喋りにくそうなたどたどしい喋り方ではなく、明瞭な言葉で評してくれた。
「なかなかよう書けてる。そうやな、75点ぐらいはあげてもええかな。せやけどこれはエッセイとしては未完成品やな。思い出の風景と現実の風景のバランスが悪い。この後に、見舞った『親父』の姿を描くことができたら完成やな。」
 その後、親父はよりよい作品にするための細かなアドバイスもしてくれた。そのどれもが的確で鋭く、なるほどと頷けるものばかりだった。
 座机の上の原稿用紙に万年筆を走らせる親父の背中を見て育ったが、文章についての話や文章に関する技術論はこれまで聞いたことがなく、初めて作家としての親父に出会った気がした。

 私たちの会話が一段落するのを待っていてくれた看護師が
「そろそろ歩きましょうか。」
と言い、介助して親父を立たせた。聞けば術後の経過も順調で、もう歩行トレーニングをしているのだという。
 キャスター付きの点滴の支柱を杖代わりにして、背中を丸め病室を出て行く親父の背中は、痩せて小さくなっていた。否応なく襲ってきた老いに向き合い、心細さもあるのだろう。
 しかし私には、やはり大きく見えた。



 退院したら、親父と月を見ながら歩こうと思った。





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Posted on 2012/02/19 Sun. 21:36 [edit]

category: エッセイ

thread: エッセイ - janre: 小説・文学

コメント

>まゆみさんへ

お孫さん見るためや無いんですか?!
ますます頭が下がります。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/25 08:41 | edit

>☆安 美☆さんへ

奄美も琉球なんだ。じゃ、行ったらとけ込めるかな(^o^)

前に言った沖縄の居酒屋、大将と喋ってたらカウンターの向こうからオバーが
「本土からか。沖縄に似てる。」
って。(^o^)
「沖縄に似てるってなに?『沖縄の人に』、やろ?」
オバーは笑いながら、
「ははは。沖縄に似てる。」
あれは未だに意味不明です。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/25 08:39 | edit

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 |  #
2012/02/24 10:08 | edit

コメントありがとうございます!

南国が好きでらっしゃるって嬉しいです!
見た目も南国っぽいんですね。
奄美はもともt琉球王国なので、人種も方言もとても似ています。

南国の陽気が島んちゅ(島民)をのんびりさせるのでしょうか・・
日々のんびりまったりって感じです。
特に海や農園に行くと日頃の色々を忘れて更にのんびりまったりできる気がします。

ホントになんでもない、ちょー簡単なブログなのに訪問してくださり、コメントまで頂けてとても嬉しいです。

今後とも宜しくおねがしますね☆

URL | ☆安 美☆ #-
2012/02/22 11:39 | edit

今はもう毎日ではないみたいなのですが………(@_@)
わが家とは道を隔てて区域が違うので孫は見れないとゆ~(笑)
孫が横断するの見たかったやろね…(>_<)

URL | まゆみ #-
2012/02/22 07:09 | edit

>まゆみさんへ


お見舞いの言葉、ありがとうございます。
たくさんの方にお見舞いの言葉を頂き
幸せだなと思います。

そうなんだ。
じゃ、きっと私もお父さんに会ってますね?
30年か・・・・すごいなあ。
なかなかできることや無いですね。
ありがたいことです。
よろしくお伝えください。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/22 00:12 | edit

>☆安 美☆さんへ


ありがとうございます。
食べさせてやりたい
本当にそう思いますよ。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/21 23:46 | edit

お父さん無事に手術終えられて良かったですね。
身体は病に倒れても、芯の所が強い方なのではないかと……思い描きました。
どんなに頑丈な身体であっても芯が弱ければ倒れてしまいます。
お父さん回復され退院されるのを願っています。。。

女の親子は友達のようになってしまいがちで……
男同士の親子はいいですね。うちの主人も父にエラソーに言いますが、お父さんにはやはり一代で店を立ち上げた尊敬の目があります(^O^)いつまでたっても追い越せないでしょう。。。
追い越さなくてもいいのでお父さんの町や人に対する思いだけは受け継いで欲しいと思っています。
うちの主人が小学校の頃から、小学生の通学路、車の通りが多い道を旗持って今も立ってる人なのです…もう30年以上やね(@_@)ひゃー
30ねん………

今までは 何したはんねん と思ってたけど子供をもつとそのありがたみがよく分かります。。。

URL | まゆみ #-
2012/02/21 21:32 | edit

またまたコメントありがとうございます!
本当につたないブログでコメントまで頂き恐縮です・・・

本当に真っ赤っかで、めちゃめちゃおいしそうですよね。
トマトってすっごく栄養化も高いんですよね。

お父様も完熟トマト「がぶりっ!」とかじったら
たちまち元気になっちゃたりして・・・

早く普通の生活ができるよう
遠方より祈っています・・・

URL | ☆安 美☆ #-
2012/02/20 23:25 | edit

>ナーサンへ


よく俺の親父のペンネームなんて覚えてるなぁ。
作品読んだわけやないやろ?
ナーサンの記憶力にはいつも脱帽です。

竹内ってのは養子に入った親父の旧姓で
独身の頃は本名で書いてて
結婚してペンネームになったわけやけど
書いてるときの自分がホントの自分って思いもあったんかなぁって
思ったりするよ。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/20 22:26 | edit

good job!
It's makes me cry

You are Kazuo Takeuchi's son
こりゃ誰も知らんか・・・

とにかく問題なきようで何より!ご家族によろしく。
りっぱな息子に育ったね~(^^)

URL | nagai@WEASE on G #-
2012/02/20 21:44 | edit

>ソライエさんへ



あたたかいコメントありがとうございます。
ソライエさんの言葉で自分が何を感じて何を考えたか
より、はっきりしてきました。
それをお話ししますね。

父を越える日・・・
もうとっくに越えたと思ってたんですが
私が越えたんじゃなくて父が老いただけだったようです。
そして文章に関してはまだまだ足下にも、のようです。
でもそれが今は嬉しいです。
教えてもらえることがちゃんとあって、
父は思ってたより老け込んじゃいないと言うことがわかって。

競い合うつもりはないです。
生業としてきた人と競い合うにはそれなりの覚悟が必要です。
私はただ書くのが好きなだけですからね。
私は私のスタイルで勝負します。
どれだけ自分の人生を、生活を充実させるか、
かな?

好きなことをしてきた父に、そこは負けたくないと思ってます。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/20 21:42 | edit

きしもとさん。
今日も心に響く記事で泣き虫ソライエ、泣きました。

ハードル上げます!
文章って書き続けると、絵と一緒でうまくなっていくと思います。
でも、どっかでぶつかるんですよね。
そのぶつかった時がお父様を越える時。
その時はお父様がすっかり回復されて
お互い競い合えるのではないかな、なんて思いましたよ。
毎回でなくてもいいので
このシリーズ、ぜひとも、気恥ずかしくても
書き続けてください!

URL | ソライエ #-
2012/02/20 21:11 | edit

>☆子さんへ


>きしもとさんは いろんな才能をお持ちなんですねー、すごい!
あれ~!?
なんだかハードル上がっちゃったなぁ(^^;)
親父に話を完結させる宿題もらったので
ちょっと頑張って書きましたよ。
息子の意地です。(^^;)

週末にもう一度実家に帰るので
その時にまた親父の評価を聞きます。
さてさて、何点かなぁ。

お見舞いのお言葉、ありがとうございます。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/20 20:46 | edit

>☆安美☆さんへ

生命って不思議でかけがえがないですね。

あのみずみずしい完熟トマトを食べたら
命のパワーをいただけそうだと思いました・・・
ってのはキレイに言いすぎだ。(^^;)
うまそうで、食いたい!
単純にそう思いました。

そう言えば親父もトマトによくかぶりついてたなぁ。

お見舞いのお言葉、ありがとうございます。

URL | きしもと #s7IGOOmQ
2012/02/20 20:39 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 |  #
2012/02/20 18:54 | edit

この文を読んでいて プロの作家みたいな印象を受けましたが
そうですか、お父様はプロでいらしたんですね。
きしもとさんは いろんな才能をお持ちなんですねー、すごい!
情景も心情も とてもよく伝わってきます。
お父様の術後の経過、順調にいきますように。

URL | ☆子 #afXvPe0k
2012/02/20 18:51 | edit

コメントありがとうございます!
種を植えて、芽が出て、つぼみが出て、花が咲いて・・・
毎日が楽しみです。
ほんと、あんな小さな種に沢山の神秘が詰まって入るんですよね。

お父様の手術成功され、回復されているようで一安心ですね。
お大事にされてください・・・

URL | ☆安 美☆ #-
2012/02/20 16:48 | edit

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