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ベース弾きのヒトリゴト的ブログ

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5月7日(日)復活ライブ決定!

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写っていた友人  

早世したNI君に捧ぐ


 私はYouTubeに個人アカウントを作り、バンドのライブの様子を写した動画をたくさん上げていた。バンドのアカウントを作ってそこに移そうと思い立ち、ブランドアカウントなるものを作って移行をかけた。ところがである。アカウントはできたものの、動画は一切移行されなかった。長時間の動画ばかりなので時間がかかっているのかと思い、1週間ほど様子を見てみたが、ひとつも移ってくることは無かった。15年分の動画全てが消えてしまったのである。
 その種の事故は数パーセントの確率で起こるようで、ブランドアカウントへの動画移行は推奨されていない作業であることが調べてみて分かったが、後の祭。復旧する方法は無さそうであった。
 ショックではあったが、私はこの春仕事をリタイアしていたので、やることができたと無理矢理自分を納得させ、自力で復旧することを始めた。
 パソコンのハードディスクの中にあるはずのデータを探すと、かなり見つけることができた。個人アカウントでは公開を数曲にとどめていたライブも完全版で残っているものもあった。
 初めて作ったバンドチャンネルにあげるのだから、折角なら旧チャンネル未公開動画から始めた方が面白いなと、歌詞の字幕を付けるなどの編集を数日かけて行い、2本のステージのアップロードをした。
 3本目。最近は三脚を立てフィックス画面で撮ることが多いのだが、そのステージは妻がカメラを回してくれていた。なので寄ったり引いたりとなかなか楽しい映像であった。
 ステージ終了後、明るくなった客席を妻は撮っていた。
 カメラに一番近い席に座っていたのは数年前に他界した友人のI君だった。ほんの数秒のことだが、懐かしい姿に急に接し、しばらく編集作業はストップしてしまった。
 バンドメンバーと相談し、彼が写ったシーンはカットしてアップすることとなった。そして、もし彼の奥様が欲しいとおっしゃればDVDに焼いて謹呈することにした。
 数日後、奥様が欲しがっておられると、連絡を取ってくれたなーさん(ギター)からLINEが入り、DVDを作った。リビングのデッキで再生してチェックしていると、妻が
「ずっと写ってはるね」
と言った。私は自分たちの演奏している姿に気を取られて気づかなかったのだが、カメラに一番近い席の彼がずっと写り込んでいるというのである。驚いてもう一度見直してみると、確かに薄暗い客席に彼のシルエットと白いシャツが手の届きそうな距離で写っている。ほんの一瞬しか写ってないと思っていたが、これなら奥様に差し上げる価値はある。
 映像はデッキのヘッドが汚れているせいか時折飛ぶ。ヘッドクリーナーをかけてもう一度見直そうと、ディスクの形状のクリーナーを探していると、ライブDVDを1本発見した。2010年のバンドの2度目のライブを記録したものだが、途中で弦が切れるというアクシデントを恥じた私は、ほぼ1度も見たことがなかった映像だ。こんなDVDがあったことすら忘れていた。そして、今回の事がなければ、きっと気付かずにいたに違いない───

 「妻のためにおおきになぁ。お礼と言っちゃなんやけど、あのDVD、見つかってよかったやん。」

 きれいにしたヘッドでスムーズに再生されている、とにかく義理堅い男だった彼の後頭部や時折見せてくれる横顔が、そう言ってる気がした。
 
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Posted on 2023/04/26 Wed. 09:37 [edit]

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出来過ぎの出会い  

 早朝ランニングに出かけた。平日のランニングコースは人気が少なく、気持ちよく走っていた。
 復路、ふと、コース沿いの河川敷の公園に目をやると、鳥の群れがさかんに何かをついばんでいた。鴨のような姿をしているのだが、嘴と額の辺りだけが白く、あとは全身真っ黒。見たことの無い鳥だったが、餌を無心についばんでいる姿が愛らしく、思わず足を止めてしばらく眺めていた────

 昨日、私は35年の勤務を終えた。
 退職後も引き続き形を変えて勤務を続けることの要請はあったが、取り敢えず一区切りをつけて、しばらく休憩することとし、ありがたい申し出だったが辞退した。
 デスクの中を空にし、きれいに磨きをかけ、使っていた部屋も隅まできれいに掃除をした。この作業自体は転勤の度に繰り返してきたことなので慣れてはいたが、やはり気持ちは違った。
「この掃除が終わると、いよいよ、職場に私のいるべき場所は無くなる。」
 実際の辞令交付は明後日だし、引き継ぎ事務は4月になっても何日か残されている。完全退職は望んだ道である。だからなのか、案外普通の心持ちで最後の日々を淡々と過ごしていた。それなのに、ここに来てこんなセンチメンタルな気分になることが、我ながら意外だった。
 片付けが済み、同僚に別れを告げ、駐車場の扉のロックを外からかけた時、幕が下りた瞬間が胸に刻まれた気がした。

オオバン なかなか寝付けない夜を過ごし、今朝は何時まで寝ていたって良かったはずなのに、いつものように、いや、それどころかいつもより1時間も早く目が覚めてしまった。天気も良いし、ぼーっとして過ごすのももったいないので、久々の平日ランニングに出ることにしたのだった。それでこの鳥に出会った。
 しばらく眺めた後、その不思議で愛らしい姿を動画と何枚かの写真に収め、再び走り出した。気持ちはなんだか軽やかになっている。
 対岸の中州の桜並木は、晴れ渡った青空に映えて眩しいほどだった。

桜 2023

 家に帰ってから調べてみると、あの鳥は「オオバン」といい、鴨の仲間では無くツル目クイナ科の鳥らしい。
 そして、「幸せを運ぶ鳥」と言われてもいるそうだ。
 妻にこのことを話すと、妻は
「初日になかなかの出会いやん」
と微笑んだ。

 確かに第二の暮らしのスタートの出会いとしちゃ、出来過ぎだな。


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Posted on 2023/03/30 Thu. 13:49 [edit]

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ライブに向けて  

 5月7日にライブが決まった。実に4年ぶりのライブとなる。
 コロナが猛威を振るい、ずっと鳴りを潜めていた。曲作りやレコーディングなど、活動そのものは続けてきたが、満足できるはずも無い。ライブ活動を再開しようと言う気持ちは抑えられず、昨年の9月に滋賀のジャズフェスに参加を決めた。それが復活ライブになるはずだった。めちゃくちゃ楽しみにしていたのだが、何の因果か大型台風が襲来しフェスそのものが中止となって出鼻は見事にくじかれてしまった。
 コロナ前からフェスを主戦場としていたので、今年こそはと意気込んで北摂の老舗フェスに音源を送ったところ、事前オーディションは無事通過。しかし、抽選で外れてしまった。姉妹フェスにもいくつか応募したがことごとく抽選でもれてしまった。またまた出鼻をくじかれシュンとなりかけたが、「今年のGWはライブ三昧だ」ってテンションになっていたし、コロナの5類引き下げも見えてきたので、ライブハウスのブッキングライブ(※)に申し込むことにした。出演経験の無い初めての店だったが、すんなり出演が決まった。GWにふて寝せずにすんだと、胸をなでおろした。

Blue Aスタジオ 昨日、そのライブに向けてのスタジオリハーサルをやった。めちゃめちゃ楽しく、3時間のリハーサルもあっという間だった。
 WEASEのスタジオ入りのペースは大体月1回で、出番までにあと2回。ライブバンドとしてはリハの回数は圧倒的に少ないが、長くやってる曲が殆どだし、それぞれが個人的に自分のパートを磨く。そしてステージ上では完全燃焼する。

WEASE復活ライブ
2023年5月7日(日)  Silver Wings京都・祇園)
対バン・ブッキングライブ 他にも数バンド出演(未定)
OPEN 18:00 / START 18:30
前売り:¥2000+1drink  / 当日:¥2500円+1drink

詳細はホームページ


※ブッキングライブ
ライブハウス主催のライブ。いくつかのバンドを出演させることが普通。対バンと言う
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Posted on 2023/03/27 Mon. 22:35 [edit]

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思い出のグラス  

 15年ほど前、滋賀の黒壁スクエア(街全体がガラス工芸のテーマパークのような場所)のガラス工芸体験工房で、まだ幼かった息子や娘と一緒にサンドブラストをして模様を刻んだロックグラス。ナイトキャップの友として愛用していたのだが、とうとう飲み口が欠けてしまった。処分しようかとも思ったが、あの日の思い出が詰まっているこれを捨ててしまう踏ん切りはつかなかった。
glass1



 数週間、流し台の隅っこで所在なげにうずくまってるグラスを眺めていたが、ハイドロカルチャーのグラスにすることを思いついた。青系のカラーサンドで飾ってやれば魚と水草の模様も映えるに違いない。
 百均へカラーサンドを買いに行ったが、あいにく白しかない。隣にあった青のゼオライトを見ると、水保ちはこちらの方がいいらしい。
「粒が大きいし鮮やかさには欠けるだろうな。一緒に入れる白のカラーサンドが隙間に入り込んでしまうかも知れないな。でも、植物のためにはゼオライトの方がいいかな。」
と納得して、青のゼオライトと白のカラーサンドを購入した。
 その後、ハイドロカルチャー用の植物を買いにホームセンターへ。いろいろ迷ったが、海のイメージなので南国のイメージが強いパキラにした。根にはオアシスがついているものを選んだ。


 夕食後、ほろ酔い気分で製作に取りかかった。まずは、透明のクリアファイルを切ってグラスより一回り小さい円筒を作る。そのままパキラを植えてもいいのだが、そうすると根が張ってきたときサンドアートが崩れてしまうし、グラスの外から根が見えると美しくない。
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  一番底は、海底をイメージして白のカラーサンド。斜めにグラスを傾けて斜面を作る。
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 パキラをセットして青のゼオライトと水の揺らぎを表現するための白のカラーサンドを交互に。
 猫が興味津々で寄ってきた。この子は木の葉を引きちぎって食べる癖がある。山羊かと思うほど広葉樹の葉でも何でも食べる。
 出来上がったら手の届かないところに置いておかなくちゃな。
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 完成。思ったよりグラスの模様が映えないなぁ・・・。もっと濃い色でないとだめかな。
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 まあそれでも、思い出の品を捨ててしまうよりはましか。
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Posted on 2021/12/04 Sat. 21:30 [edit]

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手仕事と道具  

 私はいつも近所の理髪店で散髪する。腕がいいと評判の店で、他店と比べると少々値段は高いのだが今の場所に越してきてから20年以上通い続けている。
 ここ10年ほどは東京での長い修行を終えて帰って来た若旦那に調髪ってもらっている。この若旦那がまたいい腕をしていて、あっという間に切り終えてしまう。通常の半分ほどの調髪時間しかかからない。
 京都に帰ってきて仕事を始めた頃は
「高いのにもう終わりか。」
と文句を言う客も結構いたそうだが、仕事の質でみんな黙らせてしまった。
 彼の仕事は雑なのではなくて驚異的に速いのだ。そして仕上がりに常に満足させられるのはもちろんのこと、驚くべきことに髪が伸びていってもその時々でサマになる。だからものぐさな私は、一度切ったら数ヶ月は店に行かないことになる。バッサリ短くして半年近く行かないこともあった。
 彼にいつも
「長いこと間が開きましたね。」
と笑われるのだが、私は笑ってこう言い返す。
「長持ちするように切るから悪いんやん。」
すると彼は決まって照れくさそうに笑う。
 スピードと伸びても格好がつく仕事が不思議で彼に訊いたことがある。
 彼曰く、東京で親方からたたき込まれた技で、頭の形、毛の流れ、髪質などを総合すれば、どんな風に伸びていくかが分かるのだそうだ。その予測の元に緻密な計算を瞬時にして切る。だから少しずつ切りそろえる必要がなく、結果仕事が速くなってしまうのだそうだ。職人技はどんな世界でも神がかり的だ。

 でも今日、もっと話したいのは彼の技ではなく、彼の父と初めて見た道具についてだ。
 この店では今でもマスターと呼ばれるその人に、私は一度も調髪ってもらったことがない。この店に通い始めた頃はマスターの奥さんに調髪ってもらっていたからだ。
 マスターは「髪結いの亭主」を絵に描いたような感じの人で、あまり仕事をしているのを見たことがない。いつもニコニコしながら店にいる。たまに古い馴染みの客を調髪ってはいるが、殆どは掃除かシャンプーをしている姿しか見ない。
 今日も私は若旦那に調髪ってもらっていた。彼はいつものようにあっという間に切り終え、若い衆が白髪ぼかしを始めると店を出て行ってしまった。毛染め、顔剃りの後は仕上げがある。昼食かなと思っていると、若い衆たちの会話で歯医者の予約があったことが分かった。仕上げを人に任せるようなことはしない人だが、仕上げまでに帰ってこられるのかなと思っていた。
 染髪が終わり若い衆のシャンプー。顔剃りはマスターの奥さんが久しぶりにしてくれた。その後マスターが私の散髪台にやってきた。
 この店は顔剃りの後に耳搔きをしてくれる。「マスターに耳掃除をしてもらうのか、珍しいな」と思っているといつもと感覚が全く違う。耳搔きの当たりは柔らかいのだが、

ジョリッ  ジョリッ

と音がするのだ。耳垢どころか皮膚ごと削れているような感じがする。と言っても痛いわけではない。当たりは極めてソフトなのだ。
 まさかと思ったが
「ひょっとして剃刀かみそりですか?」
と訊いた。マスターはちょっと笑って言った。
「そうですよ。痛いですか。」
「いいえ。すごく気持ちいいです。耳穴に剃刀って入るんですか。」
と、私が馬鹿な質問をすると、マスターはまた笑ってこんなことを教えてくれた。
「ははは、まさか。耳穴専用の剃刀があるんです。これは産毛だけじゃなくて、耳穴の薄い角質も削れて気持ちがいいって、はまる人が多いんですよ。
 今は西洋剃刀が主流だけど日本剃刀はいろんな種類があってね。その一つです。西洋剃刀と違って毎回研ぐ必要があるから、使う人はあまりいなくなりましたね。当然日本剃刀専門に鍛造するような職人はもういなくなったと思いますよ。だからこの剃刀も売られなくなっていますね。京刃物取り扱ってる店に行けばあると思いますけど。私は予備にもう一本持っていますが、親父の代から使っているし、毎回研ぐからずいぶん小さくなってしまいました。」
 若旦那の歯医者のおかげで大変なものに出会ったようだ。
 私はどんなものなのかが見たくなり、頼んで見せてもらった。
耳穴剃刀
<京刃物「銀座菊秀」のホームページより>


 日本の手仕事を感じさせる道具だった。
 かつて耳穴専用の剃刀があった。そこに日本人が本来持っていたはずの美意識が結晶している気がした。
 日本の文化の底をさぐると、「粋」を愛し受け継いできた人々の「息づかい」のようなものを、いつも感じる。


 マスターの掌の中のそれは、半分ほどの長さにまで研がれて短くなっていた。


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Posted on 2021/09/11 Sat. 23:12 [edit]

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